今年度のフェスティバルへ

15周年特別コラム

2. 文化庁メディア芸術祭、国内外でのさらなる展開

文化庁メディア芸術祭の新たな展開

2001年12月に制定された文化芸術振興基本法。これは文化・芸術の振興に関する基本方針と施策についての法律です。国が振興を図るべき各分野を記した同法第三章「文化芸術の振興に関する基本的施策」では、メディア芸術にもふれています。
第九条 国は,映画,漫画,アニメーション及びコンピュータその他の電子機器等を利用した芸術(以下「メディア芸術」という。)の振興を図るため,メディア芸術の製作,上映等への支援その他の必要な施策を講ずるものとする
また同章では、地域における文化芸術の振興(第十四条)、国際交流等の推進(第十五条)についても記されました。

「日本メディア芸術作品展 2002」の開催

文化庁メディア芸術祭では、2002年8月、国外でメディア芸術作品を紹介する機会が訪れました。日中国交正常化30周年を記念して、北京の中央美術学院美術館を会場に「日本メディア芸術作品展 2002」を開催したのです。
「芸術、科学技術、エンターテインメントの融合」をテーマとした同展は、科学と芸術の融合にゲームやアニメーションなどのエンターテインメント表現も加えた点が、日本の現代文化の一面を示すものとして迎え入れられました。会場には第1回デジタルアート[インタラクティブ]部門大賞の『KAGE』(近森基)や、AIBO(第3回デジタルアート[インタラクティブ]部門大賞)など、歴代の受賞作品からテーマに即した作品が集結。現地の観衆の人気を集めました。また、マンガ作品は大型パネルと概要説明に単行本の実物を添えて展示。ゲーム作品の体験展示には大勢が集まり、時間制限がかかるほどの熱気に溢れました。
文化庁メディア芸術祭の海外初となったこの北京展は、中国において日本のメディアアートやアニメーション、マンガ、ゲーム等を美術館で体系的に紹介する企画になりました。また、さまざまなジャンルのアーティストやクリエイター等が現地で交流を深め、国交正常化30周年を記念する企画としても、実りあるものとなりました。

エンターテインメントロボットAIBO
大槻 正(ソニー株式会社ER事業準備室長・開発チーム代表)/ 空山 基(イラストレーター)『エンターテインメントロボットAIBO(ERS-110)』

国内展開の充実———文化庁メディア芸術祭地方展の開催

同じく2002年、文化庁メディア芸術祭地方展もスタートします。この芸術祭の主旨に賛同してくれる地方自治体の協力のもと、国内各地で受賞作品を中心にメディア芸術作品の展覧会を開催することになりました。10月には「あいち芸術文化フェスタ2002」とのコラボレーション事業として、愛知芸術文化センターでの地方展が実現。また翌11月には、大垣市のソフトピアジャパンで岐阜展を開催。先端技術にかかわる国際IT合同会議in岐阜(IIJC)と同時開催しました。各自治体はもちろん、地域ゆかりの施設や表現者たちの協力も得ながら、各回工夫を凝らしてメディア芸術作品に親しみを持ってもらうべく取り込んでいます。作家らを講師に招いてのトークショーやワークショップ開催なども、その一例といえます。

文化庁メディア芸術祭京都展 会場風景(2010)
文化庁メディア芸術祭京都展 会場風景(2010)
文化庁メディア芸術祭岡山展 会場風景(2010)
文化庁メディア芸術祭岡山展 会場風景(2010)
■文化庁メディア芸術祭地方展開催地
  • 平成14(2002)年度 愛知展/岐阜展
  • 平成15(2003)年度 岡山展
  • 平成16(2004)年度 福岡展
  • 平成17(2005)年度 福井展
  • 平成18(2006)年度 山口展
  • 平成19(2007)年度 徳島展
  • 平成20(2008)年度 つくば展
  • 平成21(2009)年度 浜松展
  • 平成22(2010)年度 京都展/岡山展
  • 平成23(2011)年度 京都展/宮崎展

なおこれらに先立って2002年2月に開催された第5回文化庁メディア芸術祭の受賞作品展(東京都写真美術館)では、北京から中央美術学院の教授陣を招待し、最新のメディア芸術作品の動向も説明しています。これが前述の北京展における相互信頼へとつながった面もあり、こうした地道な交流も以降の展開を支えていくこととなります。

時代の変化の渦中で進化・深化するフェスティバル

2003年に行われた第6回文化庁メディア芸術祭では、前年までと同じく東京都写真美術館を会場にしつつ、使用フロアが拡大されました。また、従来の大賞および優秀賞に加え、奨励賞が新設されました(第14回まで。第15回には代わって新人賞3作品が新設)。
この年には、世界各都市の芸術祭とのコラボレーションも実現していきます。オーストリアの「アルス・エレクトロニカ(Ars Electronica)」や、アメリカの「シーグラフ(SIGGRAPH)」で、文化庁メディア芸術祭の公式上映プログラムが実現します。フェスティバル間の連携として当時まだ珍しい形でしたが、以降その輪は広がりながら継続しています。
さらに、アジア各国との協働も広がります。2004年には、韓国の国際的なアニメーションとマンガのフェスティバル「SICAF(Seoul International Cartoon and Animation Festival)」に文化庁メディア芸術祭が初出展。シアター形式のブースで、インディペンデント系からメジャー作品まで幅広いジャンルの映像を紹介しました。日本では翌2005年、第8回文化庁メディア芸術祭の会場となった東京都写真美術館近く、恵比寿ガーデンルームにて「韓国文化コンテンツ秀作展」も開催。日韓国交正常化40周年の記念行事の一環として、両国の文化交流の場となりました。
2007年には、再び中国での海外展が実現。日中国交正常化35周年を記念し「文化庁メディア芸術祭上海展2007」を上海都市彫刻芸術センターで開催しました。製鉄所を改修したユニークな美術館を活かし、「地球」「東京」「表現」をそれぞれキーワードにした空間でメディア芸術作品を紹介しました。2008年には、シンガポール展を国立美術館(国立シンガポール美術館)で開催。アジアにおける文化的な融合と共生を目指し、「GROWING TOGETHER」をテーマとした展示を行いました。会場は「洗練」「融合」「ものがたり」という3ゾーンで構成。日本の表現力を歴史の流れからも伝えるために、『松林図屏風』『北斎漫画』『からくり人形』など歴史的作品と、最新のメディア芸術作品を併置する試みも話題となりました。
2009年には、前述のアルス・エレクトロニカが30周年を迎えました。文化庁メディア芸術祭では、同フェスティバル開催中のオーストリア・リンツ市にて共同で企画展「Japan Game」を開催。日本のコンピュータゲーム史をたどる体験型の展示が行われました。
文化庁メディア芸術祭の海外および国内への展開は、このような歩みを辿って今日に至ります。現在(2011年度)は、国外においては海外展および海外参加事業(各国フェスティバル等への参加)を、国内では地方展と国内巡回事業(全国の美術館やフェスティバルを巡回)を行っています