今年度のフェスティバルへ

15周年特別コラム

3. 文化庁メディア芸術祭10周年の展開

多様化する表現とフェスティバルの意義

第7回文化庁メディア芸術祭においては、部門の再編成という大きな変化がありました。それまでのデジタルアート2部門(インタラクティブ、ノンインタラクティブ)に代わり、アート部門とエンターテインメント部門を創設。現状(2011年現在)のアート、エンターテインメント、アニメーション、マンガという4部門構成がここで確立されます。またこの回から、メディア芸術表現の発展に貢献した人物に贈られる「功労賞」が新設されました。
2004年度の第8回文化庁メディア芸術祭では、ジャンルの多様化と国際化がいっそう進みます。各種デジタルツールの普及は、個人が表現活動にそれらを取り入れる機会をさらに広げ、また従来の利用層もそのアイデアを拡張するチャンスを得て、創出される作品もジャンルの枠を超えるような多彩さをみせていきます。受賞作品としては、アート部門でフランスからの『3 minutes²』が大賞を獲得するなどしました。

Electronic Shadow『3 minutes²』
Electronic Shadow『3 minutes²』

翌年の第9回ではエンターテインメント部門の『Flipbook!』(Juan Carlos Ospina GONZALEZ)が、ネットワーク上で展開される作品としては初めて大賞を獲得しました。誰もがよく知るパラパラマンガの楽しみに基づくこの作品のように、テクノロジーの隆盛にあっても生身の感性に訴える秀作が多くみられたことも特徴です。アニメーション部門大賞の『浮楼』(榊原澄人)、マンガ部門大賞の『失踪日記』(吾妻ひでお)はこれをより直接的に示したものといえます。この回から受賞作品展は、東京都写真美術館の全フロアを使用し、館全体が一体となってメディア芸術を体験できる機会になりました。

Juan Carlos Ospina GONZALEZ『Flipbook!』
Juan Carlos Ospina GONZALEZ『Flipbook!』

2006年度には、文化庁メディア芸術祭は第10回の節目を迎えました。プロ・アマを問わず、また国境を超えた作品本意のフェスティバルとして成長してきたことについて、浜野保樹運営委員は「応募作品が優れていたゆえであることは言うまでもない。それらを公正に審査していただいた方々のおかげでもある」と述べています(審査総評)。アニメーション部門大賞は、時間旅行の能力に目覚めた少女の物語『時をかける少女』(細田守)。マンガ部門大賞は、未曾有の天変地異を経た未来の日本を描いた『太陽の黙示録』(かわぐちかいじ)。過去と未来を考えるこれらの作品の受賞も、記念すべき区切りの回を彩りました。

10周年企画展「日本の表現力」

この第10回にはもうひとつ、第4回以降の会場となってきた東京都写真美術館での最後の開催という節目もありました。回を追うごとに質とともに規模も拡大していった受賞作品展に合わせ、第11回以降は、2007年に開館した国立新美術館を会場に開催しています。
その国立新美術館のこけら落としの展覧会のひとつとして、文化庁メディア芸術祭10周年記念企画展「日本の表現力」を開催しました。これまでの成果を集結し、かつ日本のメディア芸術を、現在・過去・未来の3つの視点で紹介した展覧会です。

日本の表現力」展覧会風景 日本の表現力」展覧会風景
日本の表現力」展覧会風景

その内容は、1950年から現在までの日本のメディア芸術の軌跡を紹介する「(1)日本のメディア芸術1950-2006」、江戸から縄文時代にまでさかのぼり日本のメディア芸術の源流を探る「(2)表現の源流」、日本のメディア芸術の未来を展望する「(3)未来への可能性」の3部構成です。
文化庁メディア芸術祭の歴史を含み、かつそれを超えた時間軸を持つこの展覧会において、作品選びが重要だったことは言うまでもありません。ここでもうひとつの意欲的な試みとして、専門家の知見に加え、誰もが投票できるアンケートという形が取り入れられました。
アンケート「日本のメディア芸術100選」は、一般の方々に向けては、文化庁メディア芸術祭Webサイト内に設けた投票コーナーで実施。アート、エンターテイメント、アニメーション、マンガの4部門について作品リスト(回答選択肢)を提示し、最大10作品を選択するものです。リスト以外の作品を挙げられる自由回答も受け付けました。同時に、メディア芸術に関わる専門家の方々を対象に郵送およびFAXにてご意見を募集。結果、総投票数21万を集め、ここから各分野の上位25作品を統合したものを100選としました。
展覧会はこの結果をベースに構成され、「日本のメディア芸術1950-2006」には各部門別・年代別に名作群が並びました。加えてメディア芸術の「表現の源流」では『鳥獣人物戯画巻 甲巻』『反射式覗き眼鏡』など、また「未来への可能性」として、ヤノベケンジ+三宅一生『クイーン・マンマ』、エキソニモ『FragMental Storm 07』、宮島達男+立花ハジメ『1000 Deathclock』、操縦型ロボット『ランドウォーカー』(榊原機械株式会社)などが登場しました。
さらには、特設シアターでの上映や、各界識者がメディア芸術について考えるシンポジウムやトークセッションも行われました。明和電機のライブや宇川直宏らによるオーディオ・ビジュアル・インスタレーションの一夜限りの体験など、多彩なイベントも開催。メディア芸術の「これまで」と「これから」をつなぎ、新たな一歩を踏み出す展覧会となりました。

日本の表現力」展覧会風景 日本の表現力」展覧会風景
日本の表現力」展覧会風景

コンテンツと人材育成へ:メディア芸術をとりまく動向

ここで、10周年の前後にあったメディア芸術をとりまく動向にもふれておきます。2006年6月、内閣総理大臣が本部長を務める知的財産戦略本部による「知的財産推進計画2006」内に、優れたコンテンツを顕彰し、制作を促進するための目標として、メディア芸術祭の充実が盛り込まれました。続く「文化芸術の振興に関する基本的な方針(第2次基本方針)」(2007年2月閣議決定)に、メディア芸術などの新しい文化芸術の国際的な拠点形成も検討の必要があるむね記されます。
その後、ソフト支援とヒューマン支援に重点が置かれ、2009年には「メディア芸術関係機関の連携・協力体制構築のための基礎調査」が行われ、2010年から「メディア芸術情報拠点・コンソーシアム構築事業」や「メディア芸術デジタルアーカイブ事業」などがスタートしています。