アニメーション部門
優秀賞
わからないブタ
和田 淳
WADA Atsushi家の前にブタがいる。その家には人間がいる。みんなブタのことを知っているし、ブタもみんなのことに気付いているが、それぞれどれくらいに、どんなふうに知っているかは分からない。お母さんもお父さんのことが分からない......。更半紙に0.3ミリ芯のシャープペンシルで作画。紙の質感と線の不均質さを生かすことで、独特の感覚を生み出している。
(10分10秒)
© Atsushi Wada / Tokyo University of the Arts
プロフィール
和田 淳
WADA Atsushi1980年兵庫県生まれ。大阪教育大学、イメージフォーラム映像研究所、東京藝術大学大学院で映像を学ぶ。02年ごろから独学でアニメーションを制作し始め『鼻の日』『そういう眼鏡』などを発表。10年『わからないブタ』がファントーシュ国際アニメーション映画祭でBest Filmを受賞し、最新作『春のしくみ』がベネチア国際映画祭で上映されている。
贈賞理由
独特の息遣いで息を吹き込まれたアニメーション
『わからないブタ』はわからない。いや、そもそもわかろうとして向き合う作品ではないのかもしれない。 作者の息遣いに合わせて太極拳でも習ってる雰囲気である。和田アニメ独特の「間」にいつのまにか引きずり込まれてしまっている。
だいたい、あまり見かけない特別な絵である。潜在意識下に残っていた大昔の丸薬や貼り薬の広告の絵が突然息を吹き返したような……。スタイルは違うが町田久美氏の日本画の運動神経を鈍くしたような……。
しかしながら、この作家性は凄いと思う。
「ふっ、」とか「は、」などと発しながら和田世界の住民が周りに増殖中である。アニメイティッド(息を吹き込まれた)されたパンツ男たちやのんべんだらりのブタの息(また息である。)が、ヘンな「間」をあけて空中に男を吹き上げる。