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アート部門

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審査講評

膨大に蓄積した“時間”への問い

原 研哉

デザイナー

審査に参加して感じたことは「時間」についてである。それは何百もの大小の缶詰を無言で目の前に置かれたような戸惑いに近いかもしれない。人間は限られた時間を許されて生きている、長さの決まった紐のような存在だ。現在、情報空間の中では作品が累々と増殖し、個に許された時間とは相容れない速度で奔放なる堆積を見せている。何十万曲もの音楽、何万タイトルもの映像。自分の接触の限界を遙かに超えた「紐の長さ」を思う時、ある種の虚無感を感じてしまうのだ。静止画像の場合、動く現実や膨大な情報を、瞬時の理解へと導く合理性が表現の質を支えている。「時間」を要する作品は、そこをどう意識すればいいのだろうか。勿論、時間を短くすればいいという短絡的な問題ではないことは明らかだが、そこにどういう感覚を働かせればいいのだろう。そんな問いが生まれてきたのである。

プロフィール

原 研哉

HARA Kenya

デザイナー

1958年、岡山生まれ。グラフィックデザイナー。武蔵野美術大学教授。日本デザインセンター代表。「もの」のデザインではなく「こと」のデザインを志向し、2002年より無印良品のアートディレクションを担当、「RE DESIGN」「HAPTIC」「SENSEWARE」など、展覧会と書籍を基軸とした複合プロジェクトを数多く手掛ける。近年の仕事はAGF、JT、KENZOなどの商品デザインのほか、松屋銀座リニューアル、森ビルVI、代官山 蔦屋書店デザインディレクションなど多数。近著『デザインのデザイン』(岩波書店)は世界各国語に翻訳されている。

( 2011 )

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