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アート部門

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  • photo: KIOKU Keizo
    photo courtesy: NTT InterCommunication Center [ICC]

優秀賞

10番目の感傷(点・線・面)

クワクボ リョウタ

KUWAKUBO Ryota

インタラクティブアート [日本]

光源が備えられた鉄道模型が、床に並べられた日用品の間をゆっくりと移動しながらその影を映しだす。部屋の壁や床、天井に映し出されたモノの影は、電車から見ている風景のように移り変わりながら観者を包み込む。没入・鳥瞰、既視感・未視感といった、相反する体験を交互に繰り返す映像。鑑賞者は知覚を研ぎ澄まし、その体験を語り合うだろう。

© 2010 Ryota Kuwakubo

プロフィール

クワクボ リョウタ

KUWAKUBO Ryota

日本

1971年栃木県生まれ。98年に明和電機との共作『ビットマン』を発表して以来、エレクトロニクスを使用したメディアアート作品を国内外で発表。アナログとデジタル、人間と機械、情報の送り手と受け手など、さまざまな境界線上で生じる関係性を、制作のテーマにしている。これまでの代表作に『ビデオバルブ』『PLX』『シリフリン』など。文化庁メディア芸術祭では、『デジタルガジェット6,8,9』で第7回アート部門大賞を、また『10番目の感傷(点・線・面)』で第14回アート部門優秀賞を獲得している。『ニコダマ』は第14回エンターテインメント部門での審査委員会推薦作品に選出された。

( 2011 )

贈賞理由

分岐を超え、メディアの根源を問い直す新たな世界を開示
観客を魅了するこの作品のシステムは、シンプルでありすべてが空間的に露わになっている。技術依存的なインタラクティブアートの常套句に対し、ここでは観客が作品との直接的かつ多様な受容を開くという意味でのインタラクションが実現されている。
また映像装置史の系譜に連なりながら、その新たな展開へと踏み込むものである。古来の影絵や17世紀の幻灯、映画、また *モホイ=ナジの光と影の実験にも連なりつつ、世界への俯瞰に加えて光源移動による観客の自己投入(台車からの視点の獲得)という、これまでにない空間的、動的な一人称的知覚を獲得している。自作デバイス作品で1つの世界を築いたクワクボは、この作品を通してインスタレーション、インタラクティブアート、映像、パフォーマンスなどの分岐を超え、メディアの根源を問い直す新たな世界を開示した。*モホイ=ナジ……ハンガリーの写真家、画家、美術教育家

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