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アニメーション部門

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審査講評

世界を巻き込むアニメーション作品が生まれていくためには

主査 古川 タク

アニメーション作家

アニメーション部門ではどのような方法で審査が行われているのでしょうか?

審査が始まる前にアニメーション部門の審査委員全員で取り決めたことは、委員各自、各々が心の内でもっている審査基準に照らし合わせて審査する、ということだけです。僕の場合はあえてストーリーやプロット的な面白さ、映像表現や演出の面白さなどはすべてフラットにした状態で審査しました。使用しているツールや、短編や長編といったジャンルも関係なく、ただ「面白い」ものを評価しよう、というだけです。

各受賞作品の選定理由などを教えてください。

大賞を受賞した『魔法少女まどか☆マギカ』は強烈でした。最初はただのかわいらしいアニメだと思っていたのですが、あっさりとその皮を破って、とんでもない物語が展開される。テレビシリーズとして、次週を楽しみにさせる演出やシナリオの完成度は見事です。だからこそ、放映するたびにネット上でも大きな反響を呼び、皆がこぞって意見を交わし合った。放映するたびにコアなファンがものすごい母数で増えていくのが伝わってきました。『まどか☆マギカ』の登場によって、深夜枠のアニメは今後さらに面白くなっていくでしょうね。2011 年の春から夏という日本にとって特別な時期に進行していったドラマだったということもあります。
山村浩二さんの『マイブリッジの糸』は、今年のアート系アニメの中で随一でした。個人作家がアートフィルムとして制作した作品の中では最高峰のものです。僕は正直に申し上げて、1回見ただけではすぐに理解できませんでしたが、作家のトークシンポジウムを聴いてようやく核心に触れられたと思います。会場でも何回も繰り返し見てほしい作品です。マイブリッジが辿る数奇な運命や、「時間」を巡って映像の中に何が描かれているのか、それぞれが見極めてほしい。『まどか☆マギカ』と『マイブリッジの糸』、この2作品を比べて評価するのは無理ですね。

今年の作品全体のカラーや傾向のようなものはありましたか?

美大や専門学校などの卒業制作が、例年よりも多く応募されている印象でした。国外からも多数応募がありましたが、日本の学生と海外の学生の作品に対する意識の違いは明白です。海外の学生は明確に世界中のマーケットを視野に入れて卒業制作も行っていますが、日本の学生は作家性にもマーケットにも無頓着で、自由に作りすぎている。けれど、そういう意味で日本の学生はレンジが広いともいえる。作風についても顕著で、国外はフル3DCGが主流になってきていますが、国内では作品の一部に特殊効果のような形で使ったり、デジタルで制作していても手描きを意識したタッチにしている場合が多い。

アニメーションはこれからどのような変遷を遂げていくのでしょう?

手描きのアニメーションはアートフィルムに限らず減っていくでしょうね。私たちからすれば寂しい想いはもちろんありますが、手描きの技術というのはツールが変わってもベースとして残っているように感じます。国なんて関係なしに、もっと若いクリエイターはいろんな経験をするべきだと僕は思います。アニメの作り手という存在は元来クレイジーで(笑)、鉛筆一本で言葉を必要としないまま、世界へ冒険することができるものです。アニメを日本独自のものとして打ち出すのはいいけれど、囲い込む必要は絶対にない。若い人は多くの物事と混ざり合って、それこそ世界を旅してかき混ぜられて、新しいアニメーションを生み出してほしいですね。

メディア芸術祭は今後どのような役割を担っていくと思いますか?

国際的なアワードなのか、日本的なものなのか、線引きが曖昧になってきていると思います。だからこそ、まだまだ新しい動きは可能で、ネットで応募も審査もできるような、時代に合った世界規模のお祭りにすることだってできると思います。アニメーション部門に限っていえば、『マイブリッジの糸』はアカデミー賞を取れるかもしれない一方で、『まどか☆マギカ』のような作品を評価する場所は海外にありません。映画祭というのは前世紀の、映画的なもののためにあった。その創造力とはまた違った場所を、メディア芸術祭が担っていければ面白いですね。

未来の応募者にメッセージをお願いします。

個人作家に潤沢な制作資金はないと思いますが、それでも自由にものづくりができる環境や、自分で発表することの障壁がほとんどなくなりかけているという事実があります。働きながらでもいい、とにかく作り続けてほしいです。メディア芸術祭以外にも、コンペやアワードは世界中に山ほどありますからね。

プロフィール

古川 タク

FURUKAWA Taku

アニメーション作家

1941年、三重生まれ。TCJ、久里実験漫画工房を経て、70年代よりフリーのひとコママンガ家、イラストレーター、アニメーション作家として活動。アヌシー国際アニメーション映画祭審査員特別賞、第25回文藝春秋漫画賞、文化庁メディア芸術祭優秀賞など受賞、紫綬褒章受章。東京工芸大学客員教授。近著に古川タク瞬間漫画集 『ブルブル』(文源庫)、絵本 『かんがえるのっておもしろい(かがやけ詩--ひろがることば)』(小池昌代編、あかね書房)など。

( 2012 )

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