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アート部門

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審査講評

テクノロジーの進歩によって新たな世界がひらかれる

原 研哉

デザイナー

芸術の歴史をたどると、美や創造性といった定義しがたい情緒的な価値のダイナミズムによって編まれてきた系譜と、科学やテクノロジーによってひらかれた世界観で編まれてきた系譜の2つがあることに気付く。メディアアートは後者の系譜に連なるものだろう。解剖学や遠近法の発見は、ルネサンスという芸術の冒険を加速させたが、カメラの登場、飛行船の登場、人工衛星の登場、電子顕微鏡やコンピュータグラフィックスの登場などによっても人間の視覚は拡張され、世界の描かれ方はその都度劇的に変化してきた。メディアアートを審査し、その優れた功績を顕彰するなら、テクノロジーの進歩によって僕らがどのような世界を見ることができるようになったかを、いかに気付かせてくれるかという点から評されるべきだと思う。個人的に心に残っているのは、スペースシャトル「チャレンジャー」の打ち上げ失敗を見た記憶を、色面構成のアニメーションとして展開した『The Saddest Day of My Youth』である。これはスペースシャトルというテクノロジーを「メディア」として感じた際の世界のリアリティとして気付かされるものがあった。大賞の『Que voz feio(醜い声)』は哲学性・文学性の高い表現で好感をもったが、テクノロジーの咀嚼という意味においては、従来の映像芸術の領域に属するのではないかと思われた。

プロフィール

原 研哉

HARA Kenya

デザイナー

1958年、岡山生まれ。グラフィックデザイナー。武蔵野美術大学教授。日本デザインセンター代表。「もの」のデザインではなく「こと」のデザインを志向し、2002年より無印良品のアートディレクションを担当、「RE DESIGN」「HAPTIC」「SENSEWARE」など、展覧会と書籍を基軸とした複合プロジェクトを数多く手掛ける。近年の仕事はAGF、JT、KENZOなどの商品デザインのほか、松屋銀座リニューアル、森ビルVI、代官山 蔦屋書店デザインディレクションなど多数。近著『デザインのデザイン』(岩波書店)は世界各国語に翻訳されている。

( 2011 )

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