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マンガ部門

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優秀賞

パコ・ロカ(著) / 小野 耕世、高木 菜々 (訳)

Paco ROCA (Artist) / ONO Kosei, TAKAGI Nana (Translation)

単行本・雑誌 [スペイン / 日本]

息子夫婦に連れられて老人ホームに入ることになった元銀行員のエミリオ。多くの入居者がそれぞれの「老い」を生きる中で、「アルツハイマー」という残酷な現実と向き合い、次第に記憶を失っていく。2007年にフランスで刊行後、スペイン、イタリアでも出版され大きな話題を呼んだ。人生の長さとともに刻まれる「しわ」のように、さりげない描写を静かに積み重ね、マンガならではの手法で「老い」という現代的なテーマを見事に描き出した。

Copyright text and illustrations © 2011 by Paco Roca. All rights reserved(小学館集英社プロダクション)

プロフィール

Paco ROCA

スペイン

1969年、スペイン・ヴァレンシア生まれ。イラストレーターとして活動をしながら、コミック・アーティストとしてヨーロッパ各地で作品を発表。2008年、本作『皺』でスペインコミック賞を受賞。「老い」という社会的なテーマを扱ったことで、国境やコミックという表現の枠を越え、世界各地で高い評価を受けた。

( 2011 )

贈賞理由

老いゆく運命を受け入れる静かな視座
日本ではあまりなじみのなかった、スペインのストーリーマンガ作品。本格的な翻訳出版は、これが初めてという。認知症の兆候が出始め、老人ホームに入所することになった元銀行員のエミリオは、そこで暮らす老人たちの様々な老いの姿と出会い、自身の症状の進行と向き合うことになる。同室のミゲルは、小ずるく皮肉屋だが何かとエミリオを気遣い、2人は心を許し合う。やがてエミリオの認知症が抜き差しならなくなった時、ミゲルが見せた友情は、読むものの心に響く。登場人物たちが本人の記憶の中の年格好で描かれたり、主人公の症状の進行とともに風景や人物の顔が空白になっていったりと、単純なコマ割りに織り込まれたマンガならではの表現も見事だ。「老い」と「認知症」というシリアスなテーマを扱いながら、その描写は時にユーモラスで、優しく温かい。

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