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アニメーション部門

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優秀賞

グレートラビット

和田淳

WADA Atsushi

短編アニメーション [日本]

かつてわれわれは自分たちとは違う、崇高で深遠で神秘的な存在を「グレート」を付けて呼んでいた。それはまさにグレートで、その存在を信じる者と信じられる世界がひとつであった。時代は進み思考や思想がそれまでのものと変わり、ついには信じられていたものが信じられなくなった今、いまだにグレートと呼ばれ続けるその存在のグレートたる由縁は何なのか。Sacrebleu Productions(仏)とCaRTebLaNChe(仏)の共同製作で「不服従」をテーマに制作された作品。大きなタマを抱え一列に並ぶ子どもたち。そのタマにそっと手を添えていくウサギのような人型の生き物とそれを見守る眼鏡の幼児。タマを狙うテンのような動物と子どもの服を奪っていく鳥。そして神棚に祀られ何かを食べ続けるウサギ。0.3mmの細い線と淡く抑えた色味でこれらの登場人物や背景を描き、服従しないこととはどういうことなのかを表現した。
(7分12秒/媒体:ビデオ/技法:ドローイングアニメーション)

脚本・アニメーション・編集・声・演出:和田淳│カラーデザイン:尼子実沙│サウンドデザイン:滝野ますみ│プロデューサ:ロン・ディヤン/岡本珠希│製作:サクレブルー・プロダクション/カルトブランシュ
© Sacrebleu Productions - CaRTe bLaNChe - Atsushi Wada – 2012

プロフィール

和田 淳

WADA Atsushi

日本

1980年、兵庫県生まれ。2002年頃から独学でアニメーションを制作しはじめ、『わからないブタ』『春のしくみ』などの作品が国内外の映画祭で受賞、新作『グレートラビット』(2012)がベルリン国際映画祭短編部門で銀熊賞を受賞する。

( 2012 )

贈賞理由

デジタル制作が一般化し、映像表現の幅がより拡がったとはいっても、そのなかで本当の独自性を放つ作家は世界にも少ないが、「孤高」ともいえる唯一無二な作風で、いよいよ国際的な共同制作も始動させた和田淳は貴重な短編作家のひとりといえるだろう。描かれるのは、ただ連鎖し循環する「触感」の悦楽。その動きのなかに生まれる「間合い」とでも呼ぶべきもの。その連鎖と循環に意味があるのかないのかは、まったくわからないし、困ったことに登場人物たちさえ頓着はしていない。そこに暗喩を探り、意味を与えてしまった瞬間、その「間合い」を損なってしまう気すらする。本作では、さらに監視カメラや巻き戻し再生など不思議な客観性が加わり、その「謎」が一層深まっている。恐ろしいのは、循環し再生される関係のなかで、ただあの「とっつぁん坊や」だけが巡ってきた自分のパンツで目をふさがれ、グニュグニュと行く先を失い連鎖から外れてゆくことなのかもしれない。

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