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アート部門

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  • Courtesy of Yamaguchi Center for Arts and Media [YCAM]
    Photo: Ryuichi Maruo (YCAM)

  • Compoundeye screen with surveillance function
    Photo: Ryuichi Maruo (YCAM)

優秀賞

欲望のコード

三上 晴子

MIKAMI Seiko

インタラクティブアート [日本]

『欲望のコード』は「データとしての身体」と「ここにある肉体」との境界線が曖昧になっていく現代の状況を表現したインタラクティブ・インスタレーションとして3つの構成で展開される。白い壁面に広がるのは、昆虫の触毛を思わせる小型カメラを搭載した90個のストラクチャー★1。そして、天井からは、カメラとレーザープロジェクターを搭載した6基のサーチアーム★2が吊られている。各装置は、昆虫が蠢くように、観客の位置や動きをサーチして動き出し、観客を監視する。さらに、会場の奥には、昆虫の複眼のような直径4.7mの円形スクリーン★3が位置し、それぞれのカメラの映像データは、世界各地の公共空間にある監視カメラの映像とともに、独自のデータベースを構築し、過去と現在、会場と世界各地の映像が、複雑に交錯しながら、スクリーンに投影される。このように時間や空間を断片的に組み変えながら、新たな現実を描き出す複眼。それは、観客自身を監視と表現の対象とした、情報生態系に増殖する欲望であり、そこにある私たちの現在における身体の存在感覚を表現している。

2010年/山口情報芸術センター[YCAM]委嘱作品|アーティスト:三上晴子|共同開発:YCAM InterLab(三原聡一郎/大脇理智/濱哲史ほか)/市川創太/平川紀道/竹ヶ原設計/クワクボリョウタ|キュレーター:阿部一直(YCAM)|協賛:Microvision, Inc.|協力:多摩美術大学メディア芸術研究室
©Seiko Mikami

贈賞理由

自らが「見る」と同時に「見られる」対象となる情報化した現代を、3部構成の壮大なインスタレーションによって体感させることに成功している。昆虫の触覚のようにうごめくストラクチャーや、ビデオカメラを備えたサーチアーム、複眼のようなスクリーンといった疑似生命体のごときマシーンが、鑑賞者の姿を捉え、公共空間の監視カメラの実映像と組み合わせて映し出すことで、「生身の肉体」と機械の目によって捉えられた「データ化した身体」の境界が曖昧になる世界を表現に結実させ、私たちに示唆する。人間の知覚、さらに欲望がテクノロジーの介在によっていかなる変化を迎えているか、作家の徹底した探求は、震撼とさせる事実を突きつけるクールさと強靭さを供えている。

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