今年度のフェスティバルへ

アート部門

部門トップに戻る

優秀賞

On Pause

Mikhail ZHELEZNIKOV

映像作品 [ロシア]

これは偶然生まれたドキュメンタリー作品である。作者が本作の男に出会ったのは、空港で搭乗を待っている間のことだった。─私はプロジェクトを終えてニューヨークから帰る途中だった。ニューヨークで過ごしたのは1カ月で、正直まだ帰りたくはなく、もう1、2週間いたいと思っていた。でもそうはしなかった。もうチケットを買ってもらっていたし、面倒を起こしたくはなかったのだ。というわけで搭乗してアメリカを離れた。そしてモスクワ空港でこの男に会った。彼は飛行機に搭乗できず、1週間もそこにいた。次から次へとチケットは買うものの、実際に乗ることができずにいたのだ。それで彼は、臭くなったTシャツ1枚で、空港で売っている値段ばかりが高いひどいワインを飲み、飛行機を眺めてただ座っていた。何か詩的な感じがした。私のように「合理的」だと、このようなことは絶対にしない。誰かがチケットをくれれば飛行機に乗ってしまうものだ。でも、したくもないことをするだなんて、それはほんとに合理的なのだろうか?
(5分43秒)

© Mikhail Zheleznikov, 2012

プロフィール

Mikhail ZHELEZNIKOV

ロシア

1972年、レニングラード生まれ。サンクトペテルブルク(旧レニングラード)在住。映画を制作しながらさまざまなプロジェクトにも参加。「Message To Man」映画祭(サンクトペテルブルクで開催)において、短編実験映画コンペティション・プログラム「In Silico」のキュレーターも務める。

( 2012 )

贈賞理由

広々とした青空を背景に遠くにアエロフロート・ロシア航空の飛行機が数台たたずみ、たまに離陸する。変哲のない飛行場の情景を映すカメラがゆっくりとパンする5分弱の間に語られる不思議な男の話は、真実ともフィクションとも解釈できる。監督によるこの男についての説明もそっけなく、飛行場で会ったそこに住む男とだけある。おそらくロシアのホームレスなのだろう。世界各地で増え続ける同じような状況を生きる人々を想起させると同時に、男がつぶやく、外国で自分を置き去りにした若い愛人へのひたむきな想いは、そうした社会問題を越えた次元で共通する、人生のあやうさとはかなさ、愛と苦悩という普遍的な問いを鮮明に立ち上がらせて秀逸である。

部門トップに戻る