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アニメーション部門

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審査講評

審査を終えて思ういくつかのこと

小出 正志

アニメーション研究者/東京造形大学教授

文化庁メディア芸術祭は創設から17年の歳月を重ねたが、アニメーション部門において「劇場アニメーション/テレビアニメーション/オリジナルビデオアニメーション(OVA)」(以下「劇場・テレビ」)と「短編アニメーション」(以下「短編」)の二つの審査区分があるものの、劇場用長編と1エピソードとしては短編作品でもあるテレビシリーズのアニメーションを同一に、また自主制作による作家アニメーションと商業的な業務委託作品(コミッションドフィルム)などの短編アニメーションを、同じ区分で審査する点に大きな問題があると感じていた。しかし実際に審査に関わってみると、プロフェッショナルとアマチュア、学生といった立場や製作目的、上映・視聴時間の長短といった分節を超えた、世界の映画祭でもあまり例がないと思われるような混成型のカテゴリーの良さも実感した。最終審査会では両審査区分を超えた「アニメーション部門」として総合的な審査がなされることで、アニメーションの総合性や多様性、層の厚さや裾野の広がりといったことにも十分配慮することができる。アニメーションの多様化が進む中で、今後、既存の形式・内容、表現を超えた作品が登場した際にも対応しやすいことは、一種のアニメーション映画祭としてこの部門を見た場合、ひとつの特色、どちらかといえば長所ではないかと思うに至った。もちろん異論や批判も十分理解できる。この先の十年二十年を見据えるなら、審査の難しさの緩和・解消や公平性・客観性の担保のために、不断の努力が必要なことはいうまでもない。その努力が前述の特色を明らかな長所に育てるのだと思われる。アニメーション部門の応募総数587編は過去最多で、特に「短編」の511編は一般の国際アニメーション映画祭と比べても遜色なくむしろ誇るべき数字であろう。一方で「劇場・テレビ」の76編は確かに数としては多いが、2012年度の日本の新作テレビアニメーションタイトル数が159であり、同じく劇場用の新作タイトル数が59★であることを考えると、必ずしも多くはない。内容的にも「短編」はこの1年間に評判となった作品の多くが出品されていたが、「劇場・テレビ」は必ずしもそうとはいえない。この芸術祭が公募制を採っている以上、やむを得ないこととはいえ、この分野の振興や贈賞の公平性や妥当性などといった観点に立てば、今後に課題を残している。応募作品は「劇場・テレビ」ではやはり国内作品中心となったが、「短編」の応募には国際的な広がりがあり、この芸術祭のアニメーション界における国際的な定着が感じられた。前者でも大賞受賞作のように優れた作品が国内配給会社からではなく製作側から直接応募されるなど、この区分でも同様に17年を経たメディア芸術祭の高い国際的認知度を示したといえる。両区分いずれも1990年代以降進展著しいデジタル化が完了し、技術面だけでなく表現においても成熟してきた観がある。メディア芸術祭の17年は、デジタル化されたアニメーションの深化の17年でもある。フィルム時代には得られなかったそのクオリティが恩恵をもたらしているのは、「短編」の個人作家作品や学生アニメーションはもちろん、「劇場・テレビ」においてもである。欧米流のフォトリアリスティック(写実的)3DCGやデジタルパペットアニメーションとは異なる、日本のお家芸とされる2Dアニメーション=デジタルセルライクアニメーションでも、3DCGや2Dデジタルは費用対効果、表現拡張の両面で大きな貢献をしているからだ。従来のアナログ的技術は複数の技法・表現の統合に難点が残るが、デジタルアニメーション技術の成熟は、セル画的な表現と3DCG的表現、あるいはドローイング&ペインティングとパペットやオブジェクト、カットアウトなどを、ほとんど違和感のない形でシームレスに統合化し融合させることを容易にしたということを改めて感じた。今回の審査委員会は「短編」領域の作家2名と「劇場・テレビ」領域の作家2名、その間を橋渡しする形で私が関わり、また双方合同の最終審査会も美意識・価値観やアニメーション観の極端な差異もなく、それぞれの規範を尊重しつつお互いの立場や意見を生かした議論ができ、公正かつ適正な審査がなされたといえる。その結果、大賞には歴代贈賞作品の中でも異質ともいえる作品が選ばれ、優秀作品等も新たな才能に多く贈賞されたと考えている。★─一般社団法人日本動画協会独自集計より

プロフィール

小出 正志

KOIDE Masashi

アニメーション研究者/東京造形大学教授

1957年、愛知県生まれ。東京造形大学造形学部デザイン学科卒業(映像専攻)。88年、東京造形大学着任。専門はコミュニケーションデザイン、映像学、アニメーション研究。コミュニケーションデザインの教育と研究に携わるほか、アニメーションの教育と理論的研究、研究会やセミナー、ワークショップ、展覧会や映画祭などの企画・運営などに従事。日本アニメーション学会会長、新千歳空港国際アニメーション映画祭実行委員長、日本アニメーション協会理事、インターカレッジ・アニメーション・フェスティバル(ICAF)実行委員。日本映像学会、国際アニメーションフィルム協会(ASIFA)ほか会員。最近の共編著作に『映画百科大事典』(日本図書センター、2008)、『アニメーションの事典』(朝倉書店、2012)、『現代デザイン事典』(平凡社、2014)など。

( 2015 )

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