今年度のフェスティバルへ

エンターテインメント部門

部門トップに戻る

  • Photo: 荻原楽太郎

優秀賞

プラモデルによる空想具現化

池内 啓人

IKEUCHI Hiroto

ジオラマ、ガジェット [日本]

本作は「プラモデルによる空想具現化」をテーマに、パソコンをはじめその周辺機器をプラモデルを用いて改造し、ジオラマを作ることで、誰もが一度は空想するであろう世界を創り出したものだ。個人の記憶を保存する建物としてのパソコンは、その記憶を守るための要塞基地として、縦横無尽に動き回るマウスは防衛用の戦車として、本来の形状や使われ方に着想を得た具現化を施され、そのものが持つ特色や可能性が浮き彫りにされている。改造されたパソコンや周辺機器は、世界観を演出する建造物や風景として造形し直されているものの、機器を構成する電子回路や配線、機構などは破損されずに保たれており、そのまま使用することが可能である。

素材:コンピュータ、パソコン周辺機器、プラモデルなど

サイズ:縦60 cm× 横1,350 cm× 高70 cm

システム・ソフトウェア:Processing

重さ:30 kg

©2013 IKEUCHI Hiroto
プログラミング協力:鳥井原光二│写真撮影:荻原楽太郎

プロフィール

池内 啓人

IKEUCHI Hiroto

日本

1990年生まれ。2013年、多摩美術大学情報デザイン学科卒業。大学でデザインを学ぶ傍ら、他の時間の大半をプラモデルの制作をして過ごす。卒業制作にあたり、自分の最も身近な存在であったコンピュータの内部が秘密基地に見えるという着想から、プラモデルを組み合わせたハイブリッド・ジオラマを制作し発表した。

( 2013 )

贈賞理由

エンターテインメント部門には、毎年数多くのフィギュアやジオラマが応募されてくるが、その中でも質量ともに群を抜いていた作品である。とはいえこの作品は単に、プラモデルをベースにした「すばらしく精巧な、ものすごく巨大なジオラマ」にはとどまらない。池内のジオラマには、どこにでもある普通のデスクトップPCやUSBメモリなどの日常のガジェットが、すべてそのまま動いたり使えたりする形で含まれている。ミニチュアとリアルの二つのスケールや、有用と無用が混在しているだけでも、さまざまな妄想が刺激されるが、それもまた本作の意義のほんの一部にすぎない。「形態は機能にしたがう」だとか「機能と形態の両立」などというから、世の中のデザインはつまらなくなる。機能やコンセプトなんてどうだって良くなるような形態をつくることこそがデザイナーの本分であり、この作品はそのことを改めて主張してくれる。何といっても遠くから双眼鏡で眺めると、また格別なのだ。(久保田 晃弘)

部門トップに戻る