エンターテインメント部門
新人賞
Slime Synthesizer
ドリタ/エアガレージラボ(川内 尚文/佐々木 有美)
Dorita / Airgarage lab (KAWAUCHI Naofumi / SASAKI Yumi)本作は全く新しい演奏体験をもたらす流動体、不定形のシンセサイザーだ。スライムを触る、あるいは変形させることで音が変わるこのサウンドデバイスは、まるで音の雲を摑んでいるような音波を作り出すことができる。シンセサイザー本体と自分をつなぎ、別の接点をスライムにつなげることで、スライムを触ったときに音が出る仕組みだ。本作は「ワーボ・フォルマント・オーゲル」(1937年)、レイモンド・スコットのシンセサイザー「Clavivox」(52年)、そしてロバート・モーグの「モーグ・シンセサイザー」(64年)以降、かつてない不定形のシンセサイザーを志向する楽器でもある。また音を生み出すこと、音を変化させることに特化しているため、音階を出すことにこだわらず、リズムボックスとしての機能も持ち合わせている。
©2014 Slime Synthesizer
プロフィール
ドリタ
Dorita「視覚」と「味覚」、「聴覚」と「視覚」など、異なる五感を組み合わせた新たな体験を生み出すことを基本姿勢としている。デジタルなものをフィジカルに変換するなど、ハイテクな技術を使って、ローテクな作品に仕上げている。
エアガレージラボ
Airgarage lab音や光、触感などを中心とした装置、環境を生み出す、川内尚文と佐々木有美によるユニット。単純な振動、化学反応、物理現象をはじめ、民族楽器や幼児の玩具から近代、現代のシンセサイザーやサンプリングまでをアイデアの源として、新しい捉え方を試みている。
贈賞理由
溶解するオシレーター、液化するLFO(Low Frequency Oscillator)、解凍されるエンベロープ……。このシンセサイザーは、不定形の流動体であるスライムがパラメータとなり、演奏中の身体がスライムを媒介にテクノロジーとの融合を果たす。小説家、ウィリアム・S・バロウズが提唱した『ソフトマシーン』が女性型アンドロイドを想定するならば、これは、液状型トラウトニウムだ。原生生物の想いに浸れ!(宇川 直宏)