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アニメーション部門

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審査講評

特殊なるアニメーション表現との邂逅

大井 文雄

アニメーション作家

今回の審査を通して受賞作品に絞り込まれたアニメーションを俯瞰してみると、劇場・テレビのアニメーションと短編アニメーションとの、その表現のテーマ性、見せる対象(観客)への意識のあり方など、双方の距離のあまりの隔たりに、それらを同じ土俵に乗せて優劣の判定をすることの無理をかなり強く感じた。私が関わった過去2回の審査においてもその傾向がなかったわけではないが、アニメーション表現のウィングの広さをおもしろいと感じることもできたし、双方にはそれぞれ内包するものを対比して見る材料がもう少しあったように思う。劇場・テレビのアニメーションの最終選考に残った作品に海外からの応募作品が入らず、国内のエンターテインメント性の強い商業娯楽作品が多かったことと、対照的に短編作品には芸術指向性の強い、精神世界を彷徨う作者個人のための作品が多かったこととの極端な対比が、そう思わせる結果となったのであろうか。今後、双方のベクトルがこのように離れたままであれば、選考方法の再考も必要になってくるのかもしれない。
今回一番困難だったのは大賞の選考である。『Rhizome』が優秀な作品であることに異論はないとしても、大賞にふさわしいかどうかは審査委員のあいだで意見の分かれるところであった。これは前述した問題とも関連し、選考の難しさ(無意味さともいえる)がより際立ってくる。無限大と無限小のメビウスの輪的空間表現から哲学的ともとれる、極めて特異な作品の『Rhizome』は、従来からのアニメーションというジャンル分けでは捉えにくい表現作品としての異質の輝きが評価されたと思う。今回は短編の作品の応募がとても多く優秀作品も数多く見られた。優秀賞『Yùl and the Snake』は作者の処女作とは思えない安定感があり、賞の選からは外れたものの『Chhaya』は若い監督の卒業制作作品でありながら老いの哀しみを老成した作家のように表現し、一方『SIGNUM』は88歳の監督の老いを微塵も感じさせない力作となっている。

プロフィール

大井 文雄

OHI Fumio

アニメーション作家

1944年、京都府生まれ。多摩美術大学グラフィックデザイン学科卒業。大学時代からアニメーション創作活動を始める。当時の草月アニメーション・フェスティバルや実験映画祭で受賞歴がある。81年株式会社スリー・ディ設立に参加。テレビ番組オープニングタイトル、NHK『みんなのうた』のアニメーションを多数制作するほか、TVCM制作に数多く携わる。2000年以降フリーランスで創作活動。アニメーション制作集団「G9+1」同人。日本アニメーション協会監事。

( 2015 )

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