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マンガ部門

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審査講評

マンガは「体」がつくっている

門倉 紫麻

マンガライター

マンガは、「頭」だけではけっしてつくれない。頭のなかでどれだけの傑作が完成していようとも、「体」を使って(長時間座り続け、手を動かし続けて)「描く」ことでしか、この世に生みだすことはできない(もちろんデジタル作画でも同じことだ)。このシンプルな真実を、マンガというメディアが成熟してきた今、あらためて世界中のクリエイターに発信したい─『かくかくしかじか』大賞贈賞には、個人的にそんな思いも込めた。今年度のマンガ部門への応募作948作品すべてがそうやって「描く」ことで生みだされたものであり、まずはそのことに敬意を表したい。なかでも優秀賞『Non-working City』は、まさに「描く」という行為に執拗なまでに励んだ結果生みだされた力作であろう。
本年度から委員となり、初めて選考会に臨んだが、そこで委員同士が交わした熱い議論は「楽しい」ものであった。マンガを読むのが楽しいのはもちろん、マンガについて真剣に語ることは(むしろ真剣なほど)楽しいのだ。どんな内容であれ「おもしろさ」を追求する使命を帯びたメディアであるマンガの特性をあらためて感じた。
気になったのは、「単行本で発行されたマンガ/雑誌等に掲載されたマンガ」「コンピュータや携帯情報端末等で閲覧可能なマンガ」「同人誌等を含む自主制作のマンガ」と発表媒体ごとにカテゴリを設けているにもかかわらず、作者が発表媒体にあまりにも無自覚であったこと。紙なら紙、ウェブならウェブで読ませるための表現を追求し、かつ「マンガ」という大きな枠組みのなかでも強度を失わない作品を生みだすことに意識的な作家の出現を強く望む。そして本賞こそがそうした作家の発掘に格好の場であるとも思う。
また今年度で19回と、回を重ねてきたことで「文化庁メディア芸術祭らしさ」のようなものが審査側にも応募者側にも浸透しつつあるように感じる。賞の色が出るのは悪いことではないが、次年度以降、らしさなどものともしない、圧倒的におもしろい作品との出会いにも期待したい。

プロフィール

門倉 紫麻

KADOKURA Shima

マンガライター

1970年、神奈川県生まれ。Amazon.co.jp エディターを経て、2003年よりフリーライターに。『FRaU』『ダ・ヴィンチ』『モーニング』『レタスクラブ』などで、主に漫画に関する記事の企画・執筆、マンガ家へのインタビュー、コラム連載などを行なう。著書に『週刊少年ジャンプ』で作家の仕事術を取材した『マンガ脳の鍛えかた』(集英社、2010)、宇宙飛行士、宇宙開発関係者に取材した『We are 宇宙兄弟 宇宙を舞台に活躍する人たち』『We are 宇宙兄弟 宇宙飛行士の底力』(モーニング編集部編・講談社+α新書、ともに2012)。またフランスにて、日本のマンガ業界用語を網羅したフランス人マンガファン向けの語学書『LE JAPONAIS DU MANGA』(Misato RAILLARDとの共著、ASSIMIL、2015)を出版。

( 2016 )

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