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マンガ部門

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  • ©Garden City Publishers

優秀賞

Non-working City

HO Tingfung

[ポルトガル]

台北市のどこかにあると噂される架空の都市「Non-working City」を描いたマンガである。そこは仕事も競争もない、自足したパラダイスで、すべてが信じられないほど美しい。毎月決められた人数だけその都市に入ることができるが、正確な入口を把握している者はいない。そんな「Non-working City」に、借金に苦しむカップルが期せずして入り込む。彼らはそこで、運動エネルギーを都市を機能させる電気エネルギーに変換できるエクササイズ・マシンなどを目にし、仕事だけがサバイバルの方法ではないことに気づかされる。「Non-working City」の風景は、「桃源郷」の由来となった中国の散文作品『桃花源記』の描写を参考にしながら、現実の台北市と仮想都市が結びつけられて描かれている。本作では、機械化時代の到来以来、人々が夢見続けてきた「労働のない社会」が描かれる。機械的な都市、資金分配の不平等性、現代の社会的権力構造に光をあてた作品である。

©Garden City Publishers

プロフィール

HO Tingfung

ポルトガル

香港生まれ、マカオ育ち、台北在住の建築家・漫画家。「建築大叔(Uncle Architecture)」名義で知られている。デビュー作は『台北1/2』(2014)。

( 2016 )

贈賞理由

本作は、その独特な絵柄でユニークな作品だと早くから評判になった。審査委員のなかからは「作画の技術に難あり」という意見も出たが、野放図な絵柄がかもしだす得体の知れぬ迫力が複数の委員の目にとまり、二転三転する審査の荒波をしぶとく生き残って、数あるウェルメイドな作品を押しのけるかたちで受賞に至った。果てしなく発展を続けるアジアの混沌とした都市風景が、荒々しくも細密で素朴な絵柄で表現されており、見ているだけでも楽しい作品に仕上がっている。働く必要もない、競争もない町というと、米国のサンシティのような「上流老人」のコミュニティを想起させるが、はたしてそれで人々は幸せになれるのだろうかとこの作品は読者に問いかける。また、多くの人々の競争と労働で成り立っている現代の都市において、そのような桃源郷が存在する矛盾した現実についても読者は考えずにはいられない。(古永 真一)

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