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アート部門

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審査講評

審査を通じたメディア芸術批判と提言・中間報告

中ザワ ヒデキ

美術家

まず落選、もしくは望みどおりの賞に達しなかった作者に対しては、こうした結果を契機に過度に自信をなくしたり、応募作を破棄したりすることのないよう申し上げる。セザンヌは毎回落選しては審査長に抗議していたという。さて重要な変化が今回あった。それは「デジタル技術を用いて作られた」との規定が募集要項から消滅したことである。前回(第19回)の要項では、アート部門は「デジタル技術を用いて作られたアート作品」と太字ではっきり示され、次に角括弧にくくられる形で[インタラクティブアート、メディアインスタレーション、映像作品、映像インスタレーション、グラフィックアート(デジタル写真を含む)、ネットアート、メディアパフォーマンス等]と付記されていた。今回(第20回)の要項ではその太字箇所と括弧記号が削除され、括弧の中身が表に出た。エンターテインメント部門も同様だ。これは、デジタルとの規定が今日、実質的な意味を持たないばかりか、デジタルを使わない美術一般を結果的に排除していると前回私が批判したことの反映かもしれない。一方、メディアアートの原理や理念という内発性を要項に盛るべきとした提案は、見送られた。見送られた提案はしかし、Ralf BAECKERの『Interface I』を大賞とすることによって、審査委員からのメッセージとすることができたと考える。装置それ自体が手段でなく目的に特化されることによって、メディアアートという主題そのものが簡潔直接的に提示されているからだ。その意味では優秀賞の四作は、目的的な表現というある種自明的な価値体系内での質の高さが評価されたものである。ちなみに『The Living Language Project』はいわゆるバイオアートだが、これに対しデジタル云々を問わずに済むことは有難い。次は、メディアアートの上がりである単なるアートがそれ自体、目的化されたものをこそ見たいと思う。

プロフィール

中ザワ ヒデキ

NAKAZAWA Hideki

美術家

1963年、新潟県生まれ。千葉大学医学部在学中の83年よりアーティスト活動を開始(第一期:アクリル画)。卒業後眼科医となるも90年、絵筆をコンピュータのマウスに持ち替えイラストレーターに転身(第二期:バカCG)。97年、CGの画素を文字等の記号に置き換え純粋美術家に転身(第三期:方法絵画)。2004年、方法主義では禁じていた色彩を再び使用し、以後多彩に活動(第四期:本格絵画、新・方法ほか)。宣言「方法主義宣言」「新・方法主義宣言」。特許「三次元グラフィックス編集装置」「造形装置および方法」。著書『近代美術史テキスト』(トムズボックス、1989)、『西洋画人列伝』(NTT出版、2001)、『現代美術史日本篇1945─2014』(アートダイバー、2014)。CD『中ザワヒデキ音楽作品集』(ナヤ・レコーズ、2006)。95年度マルチメディアグランプリMMAアーティスト賞。VOCA2003奨励賞。16年より人工知能美学芸術研究会発起人代表。

( 2017 )

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