今年度のフェスティバルへ

エンターテインメント部門

部門トップに戻る

審査講評

来るべきエンターテインメントへ向けて

佐藤 直樹

アートディレクター/多摩美術大学教授

「メディア芸術」の「エンターテインメント」部門という枠組み自体が限界に来ているのではないかという感想を持った。デジタルメディアが急速に発達したこの20年の歴史的な特殊性を考えれば、「メディア芸術」という設定には納得できるし、そのなかで「エンターテインメント」がいかなる方向に進むのかも大きなテーマであったと思う。それまでの「エンターテインメント」はデジタルメディアの存在を抜きに発展してきたわけだから、ただなりゆきを見守るだけではなく果敢なチャレンジを積極的に称揚することの意義は大きかっただろう。昨年の大賞を知ったときにもそのことを強く感じた。けれども、私自身が初めて審査をすることになった今年は、むしろ「エンターテインメント」のあり方自体を捉え直す必要を感じた。そのことが炙り出される結果が出たように思う。選別のための厳密な定義付けをすべきだと言うのではない。定義なら「人々を楽しませるもの」くらいで十分だろう。問題は今の時代の「楽しみ」とは何かということで、「コンテンツ」を求める人の数をその消費に疲れ始めた人の数が上回ったとき―それが今なのではないかと思うのだけれど―、次に来るべきものは何なのか、と考えさせられた。昨年の大賞『正しい数の数え方』の岸野雄一が実践しているコンビニDJなどはその意味で大きな価値転換をもたらしていると思っていたが応募はなかった。ほかに今年の事象でいうと、『この世界の片隅に』(監督:片渕須直、原作:こうの史代、2016)の原作からクラウドファンディングを経由して劇場公開の商業映画として成功したことの、その「流れ」に大きな希望を感じた。応募という行為に結び付きようのない、人のつながりの全体性が備わっているように思ったからだ。そういった部分にも光を当て、新しい評価軸を顕在化させるにはどうすればいいのか。ただ応募を待って応募してきた人に賞を出すというあり方も含め、新たな転換期を迎えているに違いない。

プロフィール

佐藤 直樹

SATO Naoki

アートディレクター/多摩美術大学教授

1961年、東京都生まれ。北海道教育大学卒業後、信州大学で教育社会学・言語社会学を学ぶ。美学校菊畑茂久馬絵画教場修了。94年、『WIRED』日本版創刊にあたりアートディレクターに就任。98年、アジール・デザイン(現Asyl)設立。2003─10年、アート・デザイン・建築の複合イベント「セントラルイースト東京(CET)」プロデュース。10年、アートセンター「アーツ千代田 3331」立ち上げに参画。サンフランシスコ近代美術館パーマネントコレクションほか国内外で受賞多数。個人展示として、「そこで生えている。」(Trans Arts Tokyo 2013─/大館・北秋田芸術祭2014)ほか。美学校「絵と美と画と術」講師。

( 2017 )

部門トップに戻る