エンターテインメント部門
新人賞
RADIX | ORGANISM / APPARATUS
Marcel BUECKNER / Tim HEINZE / Richard OECKEL / Lorenz POTTHAST / Moritz RICHARTZ
3Dプロジェクションマッピングで巨大な木の根に映像を重ねる作品。約10分のあいだに自然物だった木の根はデジタルな構造物、そして幾何学模様の一部へと次々外観が変化する。根の複雑な形状は3Dスキャン技術で読み取られ、くぼみには3Dプリントで作成した多面体が乗せてある。コンピュータ上につくった木の根の3Dモデルに試作した映像と音を重ねてはリアルタイムで出来栄えをシミュレーションするという試行錯誤を繰り返せるようにしたことで、物と映像がぴったりと融合したリアルやバーチャルといった枠組みを超えた超現実的な外観がつくり出せた。自然とテクノロジーはどう共存していくべきか、有機的な形とデジタルが生み出す美というのは本当に対立するものなのか、作品は問いかける。
9分32秒
素材:木彫(約95cm x 85cm x 35cm, 15kg)、HDプロジェクター、ステレオ・サウンド・システム、メディア・プレーヤー
© 2016 Xenorama GbR
プロフィール
Marcel BUECKNER
1987年、ベルリン生まれ。The Film Univer sity Babelsbergで、オーディオ・ヴィジュアル・アプリケーション・デザインを学ぶ。Xenoramaのメンバー。
Tim HEINZE
1985年、ベルリン生まれ。独学のミュージシャンであり、サウンドデザイナー。Xenoramaのメンバー。
Richard OECKEL
1991年、ベルリン生まれ。ジャズミュージシャン。TU Berlinで、物理工学を学んでいる。Xenoramaのメンバー。
Lorenz POTTHAST
1990年、アヒム生まれ。University of Arts Bremen修士課程で、デジタルメディアを学ぶ。Xenoramaのメンバー。
Moritz RICHARTZ
1985年、ブレーメン生まれ。University of Arts Bremenで、デジタルメディアを学ぶ。Xenoramaのメンバー。
贈賞理由
木の根を投影対象としたプロジェクションマッピング作品。すでに一般化して久しい技術ではあるが、真正面から、真摯にその技術を深化させ、自然物の有機的かつ複雑な形状への的確なマッピングによってリアルとバーチャルの境界を往来する不可思議なイメージをつくり出している。デジタルをあえて物質と関連づけることで自然の造形美に光をあてる一方、デジタル技術の特性を活かしその美の概念を大きく変容、拡張させていく装置である。現代における「物質」と「情報」の関係性が、自然とテクノロジーの境界を曖昧にすることで浮かび上がってくる、興味深い一点である。(工藤 健志)