今年度のフェスティバルへ

エンターテインメント部門

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審査講評

技術の使い方の多様性に感心!

遠藤 雅伸

ゲームクリエイター/東京工芸大学教授

今回が2回目の審査になる。昨年は、エンターテインメント部門の異種格闘技的な混沌さに驚いたし、自らがゲー ム産業をキャリアのベースにしているので芸術の概念に疎く、エンターテインメントと芸術の線引きに苦労した。その経験から、今年はエンターテインメントと芸術を、ベクトル量的に考えて審査に当たったのだが、ガジェットにどちらの枠にもはまらない良作が多数あり、再び勉強させられた。『Pechat』は無線技術を使ったいわゆる「ごっこ遊び」だが、使う親の創造性を喚起するツールであり、使い方次第で子どもをいくらでも騙せる両刃な面を持つ。サンタクロースの実在を信じさせるのと同様、成長とともに子どもが気付いた時に、親子のコミュニケーションの大切な思い出となりそうで微笑ましい。『MetaLimbs』はロボットアームの応用であるが、ハプティクスの技術で操作性が向上しており、自己主体感だけでなく身体所有感を感じさせるレベルの身体拡張を予感させる。さまざまな道具や乗り物で「手足のように」という使用表現があるが、まさに手足そのものとなる感覚はエンターテインメント性も高く、超人スポーツを始めゲームに上手く取り入れれば大ヒットは間違いないだろう。『Qoobo』は「しっぽ」の動きだけで何かを伝えるコンセプトが素晴らしい。大賞の『人喰いの大鷲トリコ』も動物の動きをシミュレートしており、同様の体験がアクティブに得られる。一人暮らしの高年齢層が、音声応答する家電製品と会話する日常が報告されているが、『Qoobo』 にはそれを超えて癒されるシーンが見え、語らずに何かを伝えるナラティブとしての可能性を感じる。いずれも日本ならではの着眼点で、今後も予想を超えた作品が現れるに違いない。エンターテインメントの表現は、時代によって変化していくものだが、特にメディア芸術では新たな技術が、新たな可能性と今までにはない体験を生む。今後も作家諸氏のイメージの多様性に期待したい。

プロフィール

遠藤 雅伸

ENDO Masanobu

ゲームクリエイター/東京工芸大学教授

1980年代よりアーケードゲーム、家庭用ゲーム、PCゲーム、カードゲーム、携帯電話アプリゲーム、スマートフォンアプリゲームなど、あらゆる分野でジャンルにとらわれず多くの作品を制作してきた日本ゲーム作家の草分け。現在はゲームに関する教材の考案などに力を入れ、後進クリエイターの育成に努めるとともに、日本におけるゲーム研究の牽引役として活動している。

( 2017 )

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