エンターテインメント部門
新人賞
盲目の魚-The Blind Fish-
石川 泰昭/ミカヅキ フタツ/ Keishi Kondo
ISHIKAWA Yasuaki / MIKADUKI Hutatsu / KONDOU Keishi音楽家の石川泰昭が制作した曲と「いとまとあやこ」の平井亜矢子によるボーカルをバックに、木彫あやつり人形師のミカヅキフタツが製作した木彫の魚のマリオネットが、草木の中を泳ぐように動く映像作品。Keishi Kondoによる映像は、背景のぼかしや上方からのライティング、淡い色調の調整により、近所の公園にありそうな風景を水中のように見せる。魚は胸びれや尾びれなど分割されたパーツが巧みに動かされて浮遊感が表現される。また木製の鱗の質感など、思わず触れたくなるような本物の木ならではの存在感がカメラに写し取られている。楽曲、映像、彫像、そして操る手までをひとつの作品に盛り込み、その総体が見るものに詩的な情感を与える作品。
プロフィール
石川 泰昭
ISHIKAWA Yasuaki作曲家。映像音楽、映画音楽、CM音楽などを作曲している。愛知県在住。
ミカヅキ フタツ
MIKADUKI Hutatsu1981年生まれ。イラストレーター、グラフィックデザイナーを経て、チェコにてマリオネット作りを学ぶ。2013年より作家活動を開始。
Keishi Kondo
1985年生まれ。映像作家、イベンター、雑音家。東京・カナ ダで映像制作を行い、現在は愛知県を拠点に活動中。
贈賞理由
「木彫りのマリオネット」は古くからあるが、それがとても新しいものとして目に映った。様式に依存しない表現の新鮮さという、芸術的要素の基本に立ち返らされた。高まる情報処理能力とともに進化し続けるCGのリアル追求とはまた異なる感触、メディアアートとエン ターテインメントの関係性についての論議が喚起された。歌や音楽を含む映像作品としては既存の表現様式の 範囲内にある印象で、演出をめぐる見解は分かれたが、現在のメディア環境の中でプリミティブな創作の魅力を伝えようとするチャレンジに対する評価の点で意見は一致した。(佐藤 直樹)