マンガ部門
新人賞
甘木唯子のツノと愛
久野 遥子
KUNO Yoko『Airy Me』(2013)や『花とアリス殺人事件』(15)など、アニメーション作家としても活躍する作者によるマンガ処女作品集。学校生活で人と意見を合わせることへの疑問を提示する「透明人間」、少女でいることの価値に抗う「IDOL」、着ぐるみを着ることで愛を求める「へび苺」、そしてツノの生えた少女と兄の物語「甘木唯子のツノと愛」(全3話)の4編が収録されている。「ちいさなおんな(少女)」たちを描く本作では、アニメーション作家としての経験が生かされた、独特な遠近法やカメラワークが用いられており、作者のアニメーション作品からも繋がるテーマとして、形態の変容(=メタモルフォーゼ)が各話に頻出する。
© KUNO Yoko 2017
プロフィール
久野 遥子
KUNO Yoko1990年生まれ。多摩美術大学グラフィックデザイン学科卒業後、現在会社員。在学中は少女や動物、ヤンキーをテーマにしたイラストレーション、立体物、アニメーションなど、「グラフィック感」のない作品を主に制作。
贈賞理由
まず目を奪われるのは絵。アニメーション作家としても活動しているだけあって、「描きたい」と思う構図、背景、そして人物の動きがそのまま紙に映し出されているように見え、マンガを読むことの痛快さを味わわせてくれる。 少年少女の心の揺れ、という定番ともいえるテーマを、恋する少女の「着ぐるみ」を着る少年、ツノのある少女など著者ならではのファンタジックな切り口で見せていく。今は絵がやや先行しているように思えるが、今後テーマとその見せ方がさらに深化し、巧みな絵と合わさったとき、どんな世界を見せてくれるのかが楽しみだ。(門倉 紫麻)