今年度のフェスティバルへ

アニメーション部門

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審査講評

刺激を求めて

西久保 瑞穂

映像ディレクター

今年の中長編アニメーションはまとまりの良い作品が多かった。特に優秀賞の『ペンギン・ハイウェイ』『ひそねとまそたん』『若おかみは小学生!』は完成度が高い。ただ『大人のためのグリム童話手をなくした少女』のような刺激的な作品が少ないのが寂しかった。一方短編アニメはバリエーションに富んでいて楽しめた。大賞の短編『LaChute』は地獄絵巻のような不気味な世界観で、ルーズなショットは観客に何を見て何を感じるかを求め、弦楽器の不協和音が異物感を与えて刺激的だ。優秀賞の長編『大人のためのグリム童話手をなくした少女』はとても新鮮な表現で、アニメーションとは何だったのかを考えさせられる作品で私の一押し。簡略化された映像が第20回の優秀賞作品『父を探して』を思い出させるが、本作は未完の荒々しさが醸し出す情感に心打たれる。1コマでは部分を描き、動画として繋がったときにその絵が現れるという省略手法で、この荒く不安定な映像は主人公の感情と重なる表現ともなっている。余白の多い本作は情報過多なアニメーションに慣れ親しんだ人にこそ観て欲しい刺激的な作品だ。短編のおすすめは『THELOSTGARDEN』で、美しい絵本のような映像と豊かなイマジネーションが、シンプルで声高ではない素敵な物語をつくり上げている。また『LoveMe,FearMe』は粘土という素材を生かしきったアニメーション。シンプルながら喜怒哀楽も上手く表現されていて、深読みすれば時の流れへ広がりもする。ほかには、普通の物語を映像美で乗り越えた『BlueFlight』や、コラージュ的映像と音響が上手く化学反応したインパクトの『32-Rbit』、そして圧倒的な画力の新人賞『AmIaWolf?』が気になる作品だ。またネット配信のシリーズ作品『DEVILMANcrybaby』はテレビでは放送できないかもしれないエログロな表現を含め、人間の欲望などが重層的に混在していて興味深い。なおこの作品はフラッシュアニメを使って少人数で制作していることにも注目したい。

プロフィール

西久保 瑞穂

NISHIKUBO Mizuho

映像ディレクター

1953年、東京都生まれ。72年、早稲田大学放送研究会所属。76年、株式会社竜の子プロダクションに入社。79年に退社後、出崎統に師事。その後フリーとして、テレビアニメーション、オリジナルビデオアニメーション、劇場映画、CM、PV、ゲームなどのディレクションに携わる。劇場映画『アタゴオルは猫の森』『宮本武蔵―双剣に馳せる夢―』『ジョバンニの島』、オリジナルビデオアニメーション『街角のメルヘン』『エイジ』『電影少女』、テレビアニメーション『みゆき』『赤い光弾ジリオン』『天空戦記シュラト』『お伽草子』、CM『夢のかなう場所』『NEXT A-Class』、ゲーム『やるドラシリーズ』などの監督を務める。また『イノセンス』をはじめとする一連の押井守監督作品では演出を担当。『ジョバンニの島』はアヌシー国際アニメーション映画祭(フランス)、ファンタジア国際映画祭(カナダ)、毎日映画コンクール(日本)、シカゴ児童映画祭(米国)など世界8カ国で15の賞を受賞。

( 2017 )

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