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マンガ部門

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審査講評

マンガも、マンガを語り合うこともおもしろい。

川原 和子

マンガエッセイスト

今回初めて審査に参加させていただいた。応募総数(そう、この賞は応募制なのである)878作から、専門の知識を持つ精鋭の選考委員によって234作に絞り込まれ、ここからさらに受賞作を選ぶ、という大役に背筋が伸びる思いで挑んだ。審査委員の二度にわたる合議も、鋭いご意見に「なるほど!」と思ったり、自分の評価する作品のよさをどう伝えようかと必死に思案したりと非常に濃密な時間だった。マンガも、マンガについて語り合うこともおもしろい。改めてそう実感させてもらえた審査であった。そんな過程を経て選ばれた作品たちは、現代のマンガの多様性が伝わるものになったのでは、と思う。一貫して突出した評価を獲得した『ORIGIN』、人生の哀感を情感豊かに描く『夕暮れへ』、かわいい絵柄でアラサー女子の「今」を鋭く活写する『凪のお暇』。シリアスな作画でばかばかしいギャグを展開する『宇宙戦艦ティラミス』には、真剣な議論でつい寄ってしまった眉間の皺をのばしてもらった。『見えない違い―私はアスペルガー』もポップでおしゃれな絵柄と心理にシンクロした色使いが素晴らしく、『黄色い円盤』の熱量の高さには圧倒された。江戸文化の豊富な知識を自身の絵柄に昇華しエンタメに結実させた『百と卍』は、ボーイズラブ(BL)分野の作品である。言うまでもなく、長い間(主に)女性たちが大切に育んできたBLというジャンルには豊かな蓄積があり、そのもとに咲いた大輪の花のような作品に贈賞できると思うと感慨深い。また、BLマンガを介して75歳の女性と女子高校生が友情を深める『メタモルフォーゼの縁側』も、繊細な葛藤や、共感し語り合える喜びの描写に心震えた。入賞は逃したが、読みにくいのではと身構えたのにするっと引き込まれた『マッドジャーマンズ―ドイツ移民物語』、世の中のすみっこにいる人たちがロケット打ち上げに奮闘する『我らコンタクティ』も最後まで入賞線上にいたことも記しておきたい。

プロフィール

川原 和子

KAWAHARA Kazuko

マンガエッセイスト

1968年、広島県生まれ、福岡県育ち。幼稚園教諭、アニメーション制作会社ガイナックスの広報等を経てフリーに。マンガに関するエッセイ執筆やインタビューなどを行う。著書に『人生の大切なことはおおむね、マンガがおしえてくれた』(NTT出版、2009)。主な連載に、女性向けウェブサイト『SmartWoman』(日本経済新聞社、現『日経ウーマンオンライン』)にて「恋愛のお手本は、いつも少女マンガ」(2005)、ウェブマガジン『Webnttpub.』(NTT出版)にてマンガ時評「此れ読まずにナニを読む?」(2007-14)。現在、同ウェブマガジンにて 「マンガこそ読書だ!!」を連載中。『総特集三原順』(河出書房新社、2015)などにエッセイ寄稿。ムック『池田理代子の世界』(朝日新聞出版、2012)では編集協力、および執筆を担当。日本マンガ学会第10回大会(2010)にてシンポジウムのパネリストや、東京工芸大学にてゲスト講師なども務める。

( 2019 )

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