マンガ部門
新人賞
黄色い円盤
黄島点心
KIJIMA Tenshin独特の作風を持ち味とする作者の5編の作品が収録された「奇想ホラー」短編集。「円盤」は宇宙空間に巨大な円盤が現れて地球が迎える危機に、その円盤に同じく円盤(レコード)を操るディスクジョッキーが挑む物語。「プラスマイナスゼロ」は、デベソを気にする水着モデルが登場。ヘソを隠そうと押し込むが、その代わりに身体のさまざまな部分が飛び出てしまう。「宝毛と黒子毛」では、隣人の子どもが人の形をした毛の塊であり、主人公はその複雑な人間関係を覗き見ながら隣家に心を引かれていく。突飛なアイディアとそれを勢いで読ませてしまう構成はコメディとも捉えられるが、同時に、読み手の感覚を突如常識から引き離すホラーとしても高い完成度を持つ。「リイドカフェ」(リイド社)http://leedcafe.com2016年9月─連載中
プロフィール
黄島点心
KIJIMA Tenshin2007年、『くままごと』(徳間書店)でマンガ家デビュー。代 表作に『口寄せ蓮治捕物帖』(竹書房)、『甘露に肩想い』(双葉社)など。奇想ホラーを中心に執筆。
贈賞理由
奇想である。人の体毛が別人格を持って歩き出し、人の脳味噌と腸が一体化する。およそ思いつかぬか思いついても絵にはしない、怪しくも馬鹿馬鹿しいアイディアが、クセのある粘っこい絵柄と、読みやすく洗練された画面構成とで、一読忘れたい佳品となっている。今のところホラーとギャグの境界線上がホームグラウンドだが、表題作とも言うべき「円盤」に作者の“引き出し”はまだまだ多いと感じ、さらなる期待を持っての「新人賞」。一見SF的だが実は理屈のまったく通らぬ大ボラに読者を無理やり引きずり込む、この剛腕ぶりをもっと見てみたい。(表智之)