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アニメーション部門

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優秀賞

ある日本の絵描き少年

川尻 将由

KAWAJIRI Masanao

短編アニメーション [日本]

マンガ家を目指す男の半生を、実験的な手法で描いた短編アニメーション。絵を描くことが好きな少年・シンジは、自然とマンガ家を目指すようになる。小学生になると、同じく絵が好きだが覆面レスラーばかり描く不思議な少年・マサルと出会い、やがて親友に。しかし学年が上がるにつれ、2人は徐々に疎遠になっていく。その後もシンジは変わらずマンガ家を目指し、美術大学に進学。新人賞に入選したことをきっかけに上京し、やがて大きなチャンスをつかむ。しかし、待ち受けていたのは思い描いていたマンガ家生活とは異なるものだった。30歳になったシンジは久しぶりに、昔と変わらず絵を描き続けるマサルの作品に触れる。この一連の流れが、シンジの母親のモノローグも交えて語られるモキュメンタリー。主人公の成長に合わせて、作中の作画もチラシへの落書きといった子どもが描くような絵から、マンガの原稿用紙に描かれた絵へと変化し、時間の流れが表現されている。

©︎ 2018 Nekonigashi Inc.

プロフィール

川尻 将由

日本

( 2020 )

贈賞理由

絵が上手くて誉められて、それがきっかけでマンガを描く自分がある時気がつく。自分に描きたいものは無かった――子どもの頃にこの事実を突きつけられて筆を折った人も多いだろう。自分がそうだ。自身の成長と絵柄を重ね合わせた描写にそんな過去の痛みを抉られてついつい感情移入して見入ってしまった。主人公の繊細な心の揺れや彼の生きている時代や文化、美大でさまざまなジャンルの学生たちが集う様子をとにかく絵柄で表現するという一点突破なアイディアが素晴らしい。周囲の友人が「卒業」して主人公の目の前でどんどん絵柄が変わっていく様子がとりわけ秀逸。目の前にいるのに違う世界に行ってしまった感がそれだけで表現されている。それゆえに表現者としての主人公がモノクロの実写になってしまったのは空っぽさを感じさせて辛かった。変わっていく者と変わらない者の対比が明確に端的に表現され、さらにはあたたかな未来の予感さえ感じさせる、幸せな20分。(佐藤 竜雄)

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