今年度のフェスティバルへ

アニメーション部門

部門トップに戻る

審査講評

「独創性」「完成度」「必然性」

大山 慶

プロデューサー/株式会社カーフ代表取締役

今回の審査を通して、作品の「独創性」「完成度」「必然性」を強く意識するようになった。優秀賞の『マロナの幻想的な物語り』は、長編アニメーションではあまり見られない、自由な発想から生まれたデザイン、個性的な動きや演出が魅力で、ほかの優秀賞3本は、目新しさはないが作画技術や仕上がりの完成度が非常に高かった。大賞には、独創性・完成度、共に高い水準でつくられていた『映像研には手を出すな!』が満場一致で選ばれ、納得の結果となった。『映像研には手を出すな!』の素晴らしいところは、「イメージボードや設定画がそのまま動いたような絵づくり」をはじめとした、さまざまなオリジナリティのある表現が、物語をより伝わりやすくするための必然として用いられている点である。実験的な手法や演出を取り入れながら多様なエンターテインメント作品をハイペースで生み出し続けているアニメーション作家は湯浅監督のほかに思い当たらない。『ハゼ馳せる果てるまで』は、ネットを中心に多くの人々を魅了している「自主制作アニメの新しい流れ」の代表としてソーシャル・インパクト賞にふさわしく、ここから何が始まってどこへ向かっていくのか、今後の展開がとても楽しみだ。新人賞の『海辺の男』は、表面的ないわゆる「リアル」を捨て、演出によって独特な生々しさや臨場感を生み出した点を評価した。審査委員会推薦作品の『Just a Guy』は、興味深いテーマをさまざまな手法のアニメーションで描いた大変力強い作品なのだが、その手法やデザインに必然性を感じることができず、「作者の好み」の域を出ていないように感じた。「独創性」「完成度」「必然性」のバランスが取れていないと、多くの人間の心を動かすことはできない。しかし、バランスの取れていない歪な作品が、一人の人間の心を大きく動かすこともある。アニメーション表現の可能性を広げる刺激的な応募作品がたくさんあったにもかかわらず、一部の作品しか選ぶことができず、大変心苦しい。

プロフィール

大山 慶

OYAMA Kei

プロデューサー/株式会社カーフ代表取締役

1978年、東京都⽣まれ。イメージフォーラム映像研究所にて映像を学び、東京造形⼤学を卒業。卒業制作『診察室』が学⽣CGコンテスト最優秀賞を受賞、第9回⽂化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品に選出され、カンヌ国際映画祭監督週間をはじめ多くの国際映画祭で上映される。09年に『HAND SOAP』がオランダ国際アニメーション映画祭最優秀賞、オーバーハウゼン国際短編映画祭映画祭賞、広島国際アニメーションフェスティバル優秀賞など多数受賞、第13回⽂化庁メディア芸術祭審査委員推薦作品に選出。イメージフォーラム映像研究所専任講師。株式会社カーフ代表取締役。

( 2021 )

部門トップに戻る