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アニメーション部門

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審査講評

「今」から「未来」へ

佐藤 竜雄

アニメーション監督・演出・脚本家

2020年は新型コロナウイルス蔓延という異常事態によって、テレビアニメーションの制作中断や劇場作品の公開延期もさることながら、作品をつくられている個人、サークルなど団体も活動を大いに制限されたと聞きます。そんなこともあってか前年度は543の応募数から今年度は399。2019年につくられた作品も多いとはいえ、やはり今年はやめておこうと思い悩んだ方も多かったでしょう。とはいえ数こそ減ったものの、一人で何作品も応募されたり、映像学校の卒制の発表に当芸術祭を選んだのか、そんな複数人の参加が目立ちました。とりわけ連作というわけではないにしろ、同じような作風が並んでしまうとすべてを平等に審査するのに非常に注意を払わなくてはならなくなります。似たような意味では、歴代審査を担当された方々はテレビアニメーションやテレビの延長である劇場作品の取り扱いには毎回苦労されていたのではないでしょうか。目を惹く演出や作画があるエピソードがあったとしても、それはあくまでその話数の評価であって、全体のシリーズの評価ではない。しかし、文化庁メディア芸術祭におけるアニメーション部門は、そんな「アニメ」をもほかの長編短編、配信作品と同じ土俵の上で審査しようとしています。本芸術祭ならではのセレクション、これは実に困難でしたが楽しい審査でもありました。私はこう考えています。おもしろいものが賞を取ればいいじゃないか―ではそのおもしろいものとは何かというと「アニメーションかくあるべし」といった権威的な評価ではなく、「今」おもしろいもの。とりわけ若い世代が何に興味を持って未来に何を夢見ているのか、そんなものにスポットを当てたい。いろんなジャンルの作品が集まってきているからこそ選びたい。最終審査も一部リモートという状況でしたが、だからこそ未来を向いている作品が選ばれたのではないかと思います。加えて多様性。今回の新人賞はそういう意味では作風もバラバラで、「こういう作品でも賞がもらえるんだな」というひとつの指針になったのではないかと思います。前回から新設されたソーシャル・インパクト賞はメディアテクノロジー並びに人々の行動様式に影響を与えた作品に付与するものとして考えられました。『ハゼ馳せる果てるまで』の作者はここ数年、配信でバズった動画師さんの一人ですが、スマートフォンで作品動画を見る、視聴者数を競う、まさに「今」の若い人の状況を象徴しています。今回、優秀賞は長編が3本、短編が1本です。バランスが悪いと一旦は躊躇しましたが、「そういうコンテストじゃないでしょう」という意見もあり、当初の通りの結果に。『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』はテレビ版からの設定の引き継ぎはありましたが、1本の素晴らしい映画としての評価に値する作品でした。逆に大賞の『映像研には手を出すな!』はテレビだからやれること、テレビに盛り込んだらどうなるんだろう、といった試みにあふれていて、「テレビアニメで良かった!」と思える作品でした。この作品に関しては審査委員全員が最高得点を出していて、誰も文句のない決定でした。放送を開始したのは2020年1月6日、まだ世間がそれほど新型コロナウイルスで騒がれていない頃です。当初、この作品を見て映像を志す人が増えるに違いない、とソーシャル・インパクト賞のアタリを付けていたのですが、状況は大きく変わりました。しかし、だからこそ『ハゼ馳せる果てるまで』のように配信で作品を発表している若い世代、さらにそれに続く人たちにあらためて『映像研には手を出すな!』を見て欲しい。今回の大賞、ソーシャル・インパクト賞の意味は、メディアテクノロジーの未来へ向けての本芸術祭からのメッセージだと思っていただけるとさいわいです。今年は、怪我をしたりプロジェクトが凍結したりと私事でいろいろ滅入っていましたが、今回の審査でかなり勇気をもらいました。やはりアニメはいい!

プロフィール

佐藤 竜雄

SATO Tatsuo

アニメーション監督・演出・脚本家

1964年神奈川県生まれ。 早稲田大学法学部卒業後、アニメ製作会社亜細亜堂に動画マンとして入社。その後、演出に転じ「ちびまる子ちゃん」「忍たま乱太郎」「赤ずきんチャチャ」などを手がける。 1995年、初のNHKオリジナルアニメである「飛べ!イサミ」でテレビ監督を務め話題となる。 1996年「機動戦艦ナデシコ」の監督となり同作品のヒットにより、一躍アニメ界で注目を集める。 1998年公開の「劇場版・機動戦艦ナデシコ The Prince of Darkness」では、監督・絵コンテ・脚本をひとりで手がけ、好評を博した。なお、同作品および佐藤氏は、第38回日本SF大会星雲賞、第21回アニメージュ・アニメグランプリで大賞他4部門、第1回SFオンライン賞(映画部門)を受賞。 現在、月刊「放送文化」にコラム「ワタクシ流 業界絵コンテ」を連載中。 2001年5月より放送開始NHK 衛星第二「学園戦記ムリョウ」制作中。

( 2001 )

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