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アート部門

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審査講評

初めてのアート部門審査

八谷 和彦

アーティスト/東京藝術大学准教授

文化庁メディア芸術祭は、2013-15年頃仕事で関わっていたことがあり、その頃から「アート部門は応募数が多くて審査委員は大変そうだな......」とは思っていたのですが、ついに今年度アート部門の審査委員をやることになりました。改善が進んでいたせいか審査は思っていたほど過酷ではなかったのですが、一方で難しさを感じもしました。「新人」の役割は率直な意見を述べることだとも思うのでここで書くと、それは「体験型作品を審査することの困難さ」です。現在アート部門の審査は、書類とウェブ上の動画で審査をします。公平性の観点から審査用動画の時間は限られており、その短い時間内で作品の特徴や独創性を見出すのは簡単ではありません。さらに困難なのはアート部門作品の多くは体験型の作品だったりします。インスタレーションでも映像審査は困難なのにインタラクティブだったり、さらにはVR作品だったりすると、作品の本質を掴むのは極めて困難である、ということは認めざるを得ません。しかし、審査というものは本来こういうものです。限られた時間、決められた方法で応募されたものを審査し、順位をつけ表彰する。私たち審査委員は各自の経験や知見を使って、なるべく公平に全力で審査をしたつもりです。しかしそれでも完璧な審査はあり得ません。やはり直接体験した作品や、展示で実物を見た作品のほうが確証を持って審査できた、ということはあります。......そろそろ気づいた方もいるかもしれませんが、これ実は受賞に至らなかった人たちに向けて書いています。言い訳めいて聞こえるかもしれませんが、あなたたちは敗者ではありません。5人の審査委員は神ではありません。好みも専門性もバラバラです。運もあります。あなたの作品が優れていたものだった場合、負けたのは私たちです。しかし選ばれた作品はやはり光るものがあったり、あるいは展示を体験する機会をきちんとつくっていました。コロナ禍で今それは困難であることは認めます。しかしやはり何らかの方法で展示や体験会を実施していただくことを望みます。そこでまたあなたの作品に会わせて私を後悔させてください。応募してくださってありがとうございました。

プロフィール

八谷 和彦

HACHIYA Kazuhiko

アーティスト/東京藝術大学准教授

メディアアーティスト。九州芸術工科大学(現九州大学芸術工学部)画像設計学科卒業後、コンサルティング会社勤務。その後、株式会社PetWORKsを設立。現在に至る。作品に『視聴覚交換マシン』や『ポストペット』などのコミュニケーションツールや、ジェットエンジン付きスケートボード『エアボード』やメーヴェの実機を作ってみるプロジェクト『オープンスカイ』などがあり、作品は機能をもった装置であることが多い。2010年10月より東京藝術大学美術学部先端芸術表現科准教授。

( 2021 )

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