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マンガ部門

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審査講評

困難な状況下でもマンガはますますおもしろい

川原 和子

マンガエッセイスト

予想外のコロナ禍のもとでの審査となった今回のマンガ部門応募作品数は792作。そのなかから、今年も真剣な討議の末、個性と魅力にみちた以下の作品に贈賞することとなった。『3月のライオン』はすでに評価の高い人気作だが、あらゆる年代の心をゆさぶる圧倒的な作品の力に、審査委員の総意のもと大賞に決まった。優秀賞には、突出した画力と独自の筆致でフランス革命の時代を描ききった『イノサン Rouge ルージュ』、誠実な作風でさわやかな感動を呼び起こす『塀の中の美容室』、出産をめぐる葛藤とその先の希望を描いた『かしこくて勇気ある子ども』、孤独死というシビアなテーマをコミカルに描く『ひとりでしにたい』が選出された。画面から音楽の躍動が感じられる『スインギンドラゴンタイガーブギ』、日常のすぐ隣の味わい深いドラマを描く『空飛ぶくじら スズキスズヒロ作品集』、そして圧倒的なパワーで読者をひきこむ『マイ・ブロークン・マリコ』が新人賞を獲得。ソーシャル・インパクト賞には、魅力的な描写でアイヌの文化を広く浸透させた『ゴールデンカムイ』が選ばれた。受賞作の多様さと充実からも感じてもらえるかと思うが、困難な状況下であってもマンガはますますおもしろく、生き生きとした娯楽であり、考えるよすがでもあり続けてくれている。そのことを心から誇らしく頼もしく思う。応募総数が昨年から100作以上増加した一方、「同人誌等を含む自主制作のマンガ」の応募が56作から37作へと減少し続けていることは少し気がかりだ。人気の商業作品も自主制作作品も同一線上での審査対象となるのは本賞の素晴らしい点だと思う。私の任期は今回で終了だが、多様なジャンル作の応募を通じて、来期以降の審査委員の方々を、さらには読者を驚かせて欲しいと願っている。審査委員会推薦作品では、ひとの共存を繊細に見つめる『違国日記』、壮大なスケールで長期連載を完結させた『イムリ』が特に強く印象に残った。

プロフィール

川原 和子

KAWAHARA Kazuko

マンガエッセイスト

1968年、広島県生まれ、福岡県育ち。幼稚園教諭、アニメーション制作会社ガイナックスの広報等を経てフリーに。マンガに関するエッセイ執筆やインタビューなどを行う。著書に『人生の大切なことはおおむね、マンガがおしえてくれた』(NTT出版、2009)。主な連載に、女性向けウェブサイト『SmartWoman』(日本経済新聞社、現『日経ウーマンオンライン』)にて「恋愛のお手本は、いつも少女マンガ」(2005)、ウェブマガジン『Webnttpub.』(NTT出版)にてマンガ時評「此れ読まずにナニを読む?」(2007-14)。現在、同ウェブマガジンにて 「マンガこそ読書だ!!」を連載中。『総特集三原順』(河出書房新社、2015)などにエッセイ寄稿。ムック『池田理代子の世界』(朝日新聞出版、2012)では編集協力、および執筆を担当。日本マンガ学会第10回大会(2010)にてシンポジウムのパネリストや、東京工芸大学にてゲスト講師なども務める。

( 2019 )

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