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マンガ部門

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審査講評

自信に満ちた作品たちはすべて魂に響いてくる

島本 和彦

マンガ家/株式会社アイビック代表取締役社長

マンガ、コミックは自由度の高い表現方法で、表現したい内容と描き上げる技術力があれば(あと道具があれば)創作でき、今自分が考えて思いつかないであろうほどの表現方法が誕生する可能性がある。それを評価するというのは、同じマンガ制作に身を置く者として非常に勉強になる。リストアップされた作品はどれも自信に満ちあふれたラインナップで、予想もしない角度から斬り込んで来る。恥ずかしながら、長期にわたって連載されてきた入魂の一作を初めて目にするものもある。どれも作者の心の形であり、メッセージである。特に評価したいのは作品の仕上がりもそうだが「新たな地平の開拓」であると思う。こういうやり方もあるのか、と真っ白い原稿用紙(あるいは無地データ)に十分に自由を与えられていた自分が思いつかなかった表現と出会うときには感動に打ちのめされる。マンガは多くが個人の作業(ほかのジャンルに比べて作者の思いがダイレクトに反映されやすい)なのですべてがキレイにまとまっているわけではないがその制作労力は本当に人生を削っていくもので、自分の持ち時間を犠牲にしなければ作品などつくれない。そして努力して作品をつくっても読み手の心に響くかどうかは読み手しだいである。今回の作品群には同テーマをモチーフにしたものも数々見うけられたが、ただ批判精神をヒステリックにぶつけるだけでは完成度が高くはみられない。作者自身がその問題に対してどう対峙しているのか、乗り越えるべき部分はどう乗り越えたのか、という「テーマとの闘い」が「個人作業」だからこそよりその部分が際立って(特に同テーマの作品が並べば)くるのである。マンガは創作時間が恐ろしいほど個々の人生を削っていくメディアであるが、描けば描くほど洗練されていく(新人の荒けずりな魅力も捨て難いところはあるが)。どんどん腕を磨いてまだまだあるであろう未開のフロンティアを開拓し、物語を発見していって欲しい。特に2020年以降は問われるテーマが増えていきそうな気がする。

プロフィール

島本 和彦

SHIMAMOTO Kazuhiko

マンガ家/株式会社アイビック代表取締役社長

北海道中川郡池田町出身、北海道札幌市在住。本名は手塚秀彦。1982年『必殺の転校生』にてデビュー、代表作に『炎の転校生』、『逆境ナイン』、『燃えよペン』、『吼えろペン』、『超級! 機動武闘伝Gガンダム』、『アニメ店長』など。現在『アオイホノオ』、『ヒーローカンパニー』を連載中。『アオイホノオ』で第60回小学館漫画賞一般向け部門、第18回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞。株式会社アイビック代表取締役社長も務める。

( 2021 )

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