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アニメーション部門

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大賞

The Fourth Wall

Mahboobeh KALAEE

短編アニメーション [イラン]

生活空間としての家や家族の関係性を創造的に再構成した「台所」を舞台とする実験的な短編アニメーション。洗濯機と一体化した母親、冷蔵庫と一体化した父親、生まれたばかりの赤ん坊、そして吃音症の少年自身を登場人物とする本作では、台所という狭い空間の中で繰り広げられる家族についての物語が、少年の視点から語られる。平面に描かれた台所設備や実写の洗濯機や冷蔵庫に、ストップモーション・アニメーションや2Dアニメーションなどの技法が組み合わされた独特な表現手法は、まず場面のなかでアニメーション化する要素をデザイン、配置し、カメラを動かしながらそれらの要素を撮影、最後に映像に絵を挿入する、という3つの工程を重ねることで生み出される。複数の技法を組み合わせることで技法同士の境界が溶け合い、均一な性質を持った映像がつくられている。次々と場面の転変する物語が自在なカメラワークで臨場感豊かに表現され、鑑賞者は現実と想像のあいだの曖昧な境界線に立たされる。

プロフィール

Mahboobeh KALAEE

イラン

1992年、イラン生まれ。独立系のアニメーション映画制作者。

( 2022 )

贈賞理由

立体素材と平面素材が融合した、視覚の刺激に満ちあふれた作品である。壁面を2Dアニメーションが展開する場として活用する手法自体は必ずしも珍しくないが、手持ちカメラで撮影したと思しき流動的なカメラワークとの連動は見事の一語。全体を貫くライブ感、とりわけ回転のモチーフ(カメラ自体の回転と洗濯機の水槽の回転)による運動性は印象深く、見る者を眩暈のような映像体験に巻き込んでいく力がある。ミニチュアセットの舞台と家具(母親=洗濯機と父親=冷蔵庫!)は両親の不和に翻弄される子どもの視点を体現していると同時に、ままごと遊びに興じているかのようなユーモアをもたらしている。なお、本作品は作者のデビュー作品にあたり、ナレーションとサウンドデザイン以外はすべて本人が担当している。現在は長編企画も準備しているとのことで、今後の活躍にも大いに期待したい。(権藤 俊司)

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