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フェスティバル・プラットフォーム賞

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ドームシアター カテゴリー

親愛なるウイルスたちへ

王 俊捷

WANG Junjie

映像 [中国]

ウイルスに対して厳しいまなざしが向けられる昨今だが、人間とウイルスは古くから切っても切れない関係にある。本作品は、そんなウイルスというひとつの生命と共存する願いを込めた手紙である。真っ白い空間で、植物が芽吹いては散っていくなか、「体の中に何かいる」というナレーションとともに現れるのが、変幻自在に形を変える青い物体。それが青い牛へと変化して歩みを進めた後に一転、背景は黒に変わり、遺伝子や樹木を思わせるらせん状のモチーフが画面中を駆け巡っていく。白と黒の空間に現れる限られたオブジェクト、淡々としたナレーション、ピアノを基調とした静謐ながらも焦燥感を覚えさせる音楽、主題を明確にした作品タイトル、これらの要素で人間とウイルスの関係を詩的に表現した。真珠のような光沢のあるアクリルパール板に絵の具を用いて描かれた360°アニメーションだが、VR環境だけでなく平面の画面での鑑賞でも作品の持つ神秘性を感じられる。

©︎ 2021 WANG Junjie

プロフィール

王 俊捷

WANG Junjie

中国

( 2022 )

贈賞理由

本作は、審査で大量の応募作を見ていたなかでも特に印象に残っていた作品で、納得の結果だった。審査会では、手描きによる質感のあるアニメーション表現と、コロナ禍の時代に紐づいたナラティブが高く評価された。ドームシアター カテゴリーには宿命的(?)に、例年CG主体のオーディオビジュアライザーのような表現がたくさん応募される。決してそれらがダメと言うわけではないが、どうしても既視感のある表現になってしまうことは否めない。そんななか、本作の絵具が塗られていくような生命感あふれる手触りを感じるアニメーションが目を惹いた。また360°を意識した空間的レイアウトも、ぜひドームで体験してみたいと思わされた。語られるストーリーについても、今の時代に対する不安を直接的に描くのではなく、どう受け入れていくのかといったテーマとポエティックに向き合っており、時流に乗ったコンテンツとしても評価ができると感じた。本作をドームで体験できる日を楽しみにしている。(川村 真司)

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